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研究開発・技術情報
清水信義名誉教授について

ゲノム研究の礎となった清水先生

清水先生は、1983年に慶應義塾大学医学部に迎えられ、その後10年間、以前から在籍していたアリゾナ大学と合わせて2つの研究室を毎月行き来し、研究と教育に励みました。両研究室は異なる研究テーマを持ち、それぞれが他の研究機関との競争を経て研究費を勝ち取り、顕著な研究成果をあげました。このようにして、清水先生は、1988年にヒトゲノム計画が国際的に始まった時に主要メンバーとして活躍する基盤を築いていました。

清水先生は、遺伝子マッピングから、増殖因子とその受容体、癌、遺伝子発現調節、細胞分裂、ゲノム、疾患、データベースなどの研究分野を一体化し、合計で597編の原著論文を発表しました。2004年には清水研究室の20周年記念シンポジウムを開催し、関係のある海外の研究者を招待するなど、2007年に慶應義塾大学教授を退任するまで、24年間にわたり多くの仲間と切磋琢磨しながら、最先端の研究に取り組みました。

その後、清水先生は、慶応義塾大学名誉教授という称号を授与され、つくば市に慶應義塾大学先端研GSPセンターを立ち上げました。しかし、その矢先、浜松で開かれた学会で特別講演を行っている最中に脳出血で倒れ、3ヶ月の入院生活と2年余りの通院リハビリを余儀なくされました。研究への復帰後には、清水研究室で独自に開発したヒト型人工抗体ライブラリーを用いた応用研究にとりかかることができました。

 

その後、清水先生は2015年6月に永眠しました。

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先生の著書:
ヒトゲノムワールド

「ヒトの設計図」はここまで解明された! 21番染色体、22番染色体を解読した第一人者が説く、「生命のはじまりと進化」から、「遺伝子操作と再生技術」「ヒトの進化と恐竜復活」まで。【「TRC MARC」の商品解説】より

清水先生の経歴について

出 生:
1941年 大阪

学 歴:
1965年 名古屋大学理学部化学科卒業

1970年 名古屋大学大学院理学研究科博士課程修了

学 位:
理学博士、名誉医学博士

受賞歴:
Sarnoff賞(1965年)
内藤記念奨励賞(1971年)
米国Kroc 賞(1977年)
米国対癌協会奨励賞(1978年)
米国NIH功労表彰(1983年)
日本人類遺伝学会賞(2000年)
中日文化賞(2003年)
文部科学大臣賞(2004年)
慶應義塾賞(2007年)

職 歴:
1970年:

名古屋大学理学部分子生物学研究施設助手
1971年:

渡米、カリフォルニア大学サンディエゴ校、エール大学で博士研究員
1977年:

アリゾナ大学分子細胞学科准教授更に教授及び癌生物学科兼担教授
1983年:

慶応義塾大学医学部分子生物学教室教授及び理工学部環境情報学部兼担教授
2007年:

慶應義塾大学医学部定年退職し、慶應義塾大学名誉教授。
慶應義塾大学先導研GSPセンターを創設し、名誉所長
その他:

長浜バイオ大学特別招聘教授、同志社大学特別客員教授、アリゾナ大学客員教授,ハチュガニ医科薬科大学特別招聘教授、中国医科大学名誉教授

主な役職:
科学技術庁・航空電子等委員会専門委員
文部科学省・科学研究費委員会専門委員
厚生労働省・厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞専門委員会委員
日本学術振興会・科学研究費等審査会専門委員
金原一郎記念医学医療振興財団研究助成選考委員
ライフサイエンス振興財団評議員・研究助成選考委員会委員長

主要研究成果と活動

1974年:

ヒト遺伝子マッピングワークショップ(Human Genome Mapping Workshop) をエール大学でスタートShimizu ヒト遺伝学(Shimizu Human Genome)を発表
1977年:

EGF(上皮増殖因子)の検出・定量化システムの構築
1980年:

遺伝子マッピング、染色体特異的DNAライブラリー構築
1983年:

ゲノミックBACライブラリー構築
疾病遺伝子マッピング構築 数メガ塩基におよぶ巨大DNA断片の分離技術を確立
1989年:

ヒトの21番、22番染色体の分離に成功
コンティングマッピング、エキソンマッピングを構築
1993年:

日本アクアゲノム研究会を立ち上げ(魚介類のゲノム研究)
1997年:

疾病遺伝子クローニング
1998年:

ヒトゲノム解読国際チームリーダーの一人として
1999年:

22番染色体の解読完了
21番染色体の解読完了
2000年:

8番染色体の解読完了
2003年:

ヒトゲノム計画完了


学術誌編集委員:
Genomics, Mammalian Genome,Somatic Cell Molecular Genetics
Cytogenetics Cell Genetics, J. Exp. Zoology (Executive Editor)
Methods , J. Human Genetics, Expert Review in Molecular Medicine
In Sight (Science), Encyclopedia of the Human Genome
Research Signpost Cancer Science, Chinese J. Medical Genetics
Human Mutation (Communicating Editor), Gene Therapy and Regulation

学会・研究会・市民啓発活動:
日本遺伝子診療学会(監事、理事長)、日本染色体遺伝子検査学会(最高顧問)、日本人類遺伝学会(評議員)、日本生化学会(評議員)、日本分子生物学会(評議員)、日本癌学会(評議員)、日本細胞生物学会(評議員)、日本アクアゲノム研究会(会長)、日本DNAアカデミー(会長)、ゲノム塾(塾長) International Society for Aquatic Genomics (President), Human Genome Organization HUGO (Founding Council), Human Genome Variation Society(Council)

 

主な著書・訳書:
『ヒトの遺伝学』(東京化学同人)(訳書)、『遺伝子治療革命―DNAと闘った科学者たちの軌跡』(日本テレビ)(訳書)、『DNAサイエンス』(医学書院)(訳書)、『DNAサイエンスラボラトリー』(医学書院)(訳書)、『ヒトゲノムの分子遺伝学』(医学書院)(訳書)、『ヒトの遺伝子マッピング―体細胞遺伝学と遺伝子工学の新領域』(講談社)(共著)、『最先端レポート日本「ヒトゲノム計画」のいま』(ビジネス社)(共著)、『日本のトップランナー清水信義が説くヒト「ゲノム」計画の虚と実』(ビジネス社)(著書)、『ヒトゲノムワールド』(PHP研究所)(著書)、『ヒトゲノム=生命の設計図を読む(岩波科学ライブラリー)』(岩波書店)(著書)、『ゲノムを極める』(講談社)(著書)など。

清水先生の主要研究成果

清水先生の研究の出発点は名古屋大学理学部化学科4年生で師事した、岡崎令治先生の研究室です。そこで将来にわたる研究への厳しさと迫力を学びました。大学院では2つの新規枯草菌ファージを発見し、また、生きた化石の核酸の解析を行いました。

1971年、米国に留学し、カリフォルニア大学サンデイゴ校で3年間、エール大学に移り3年間、研究員として実験に没頭しました。ヒト・マウス雑種細胞を用いたヒト遺伝子の染色体地図作りに熱中し、多くの原著論文を発表。1974年には第1回のヒト遺伝子マッピングワークショップがエール大学で開催。1977年、アリゾナ大学准教授に選ばれ、初めて自分の研究室を持ちました。

清水先生は、細胞増殖因子のマッピングに初めて挑戦し、EGFレセプターのマッピングに成功しました。以後、この研究がEGFを介するシグナル伝達と発癌との関連へと発展し、研究は40年以上続きました。

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1983年に慶應義塾大学医学部分子生物学教室教授として帰国。細胞増殖因子の研究を続けながら、染色体を分離する技術をはじめとして、ゲノムDNA断片のマッピング、シーケンシングへと進めていきました。1988年、HUGOの設立後、ヒトゲノム解析が国際協力で始まり、清水先生のチームはメンバーに選ばれました。このチームは、慶應ストラテジーを構築し、着実にゴールに向かって先頭をきって成果を出しました。

そして、清水先生のチームは、1999年12月、世界で初めて、ヒト22番染色体の解読完了に成功し、Nature誌に発表しました。さらに、2000年にはヒト21番染色体、2003年には8番染色体の完読を発表しました。国際的なゲノム解析のプロジェクトは2003年に暫定的に終了したことになりましたが、その機能は、まだ半分ほどしか、明らかになっていませんでした。

清水先生は、これらの機能不明の遺伝子を“カオナシ”と命名し、メダカを用いて個体発生における役割の解析を進め始めました。ゲノム解析と平行して、清水先生は、数々の疾患原因・関連遺伝子のクローニングとその機能解析を行ってきました。22番染色体上の異常による疾患には、デイジョージ症候群、猫目症候群、del22症候群、21番染色体上の異常の場合にはダウン症、自己免疫疾患、難聴、躁鬱病など、そして、8番染色体上の異常では、コーエン病、家族性てんかんなど、さらにはパーキンソン病、天疱瘡、免疫グロブリン、緑内障などの原因・関連遺伝子を解明しました。特にパーキンソン病の遺伝子はパーキンと自ら名付け、神経性の疾患の原因遺伝子の病因を明らかにするきっかけになりました。

2007年3月、慶應義塾大学を停年退職し、6月には新しい研究所、ゲノム・スーパー・パワー(GSP)センターをつくばに創設して精力的に研究を続けました。また株式会社GSPエンタープライズを設立し、清水先生たちが独自に構築した超レパートリー人工抗体ライブラリーを発展させ、種々の応用を目指しています。

清水教授について
当社のテクノロジー
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当社の抗体ライブラリーは、一本鎖抗体を提示するファージディスプレイ型です。
抗体遺伝子配列の種類は10の13-14乗になります。
性能が飛躍的に向上したFab型抗体を提示するライブラリーの研究開発も進めています。

当社のテクノロジー
抗体作成技術

抗体の特異性を利用した
豊富な抗体ライブラリーの実現

抗体とは体内に入った異物に対する生体(免疫系)の攻撃ツール(タンパク質)であり、免疫グロブリン(immunoglobulin)と呼ばれています。抗体が結合する標的を抗原と呼びます。

抗体は複数の抗体産生細胞由来のポリクローナル抗体と一種の細胞由来のモノクローナル抗体に分類できます。
モノクローナル抗体の特徴は、重鎖・軽鎖それぞれ一種の遺伝子にコードされているため、性質が均一であることです。

また抗体を作製するためには、動物を免疫する方法と遺伝子組換え技術を応用した動物個体を使用しない方法に大別されます。

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抗体ライブラリーの特徴は、生体に害を引き起こす可能性がある抗原・抗体(自己抗体など)にも対応可能なところです。スクリーングにより抗体遺伝子を入手できるので、各種組換え抗体の産生が可能です。

当社はファージディスプレイ型抗体ライブラリーを独自に開発し様々な抗体を単離しています。

最先端の抗体医薬開発に

生物・医学研究では抗体の特異性を利用して様々な検出ツールとして利用されています。また近年医薬としても組換え抗体が実用化されその有用性は高く評価されており、現在も様々な抗体医薬が開発中です。

組換え抗体

多くの哺乳類は5つのクラス(IgG、IgA、IgM、IgD、IgE)に分類される免疫グロブリンを産生します。IgGは血漿(血液の液体部分)中に最も多い単量体の抗体で、研究用ツールとしてもっとも汎用されています。
IgGは分子量約170kDaで、2つの重鎖(H鎖)ペプチドと2つ軽鎖(L鎖)ペプチドから構成され、それぞれ別々の遺伝子でコードされています。抗原結合に関与する領域(ドメイン)をそれぞれVH、VLドメインと呼びます。これらをリンカーペプチドで繋いだ人工組換え抗体を一本鎖抗体(単鎖抗体、scFv)と呼び分子量は約30kDaです。IgGと比較して約1/5と小さく単一遺伝子でコードされるため遺伝子改変等が容易なのが特徴です。

当社の抗体ライブラリー

ヒトが一生で作り出す抗体のレパートリーに匹敵する
広大なパターンを持つライブラリーとスクリーニングシステム

I. 抗体遺伝子の多様性
 i. CDR(超可変領域)
  •変異導入 PCR
  •CDRシャフリング
 ii. VH-VLシャフリング


II. ライブラリ作製・安定性
 i. 非発現 VH/VLサブライブラリー
 ii. 大腸菌内 Cre-lox組換え
 iii. 厳密な人工tetプロモーター
 iv. ペリプラズムシャペロン共発現ベクター

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ファージディスプレイ型抗体ライブラリー

当社の抗体ライブラリーは、一本鎖抗体を提示するファージディスプレイ型で、大腸菌に感染するファージ表面に抗体タンパクが融合しそれをコードする抗体遺伝子を内部に保有するファージの集団からなります。

当社の抗体ライブラリーの作製法

抗体遺伝子のレパートリーを増やすため材料のcDNAライブラリーからPCR法で抗体遺伝子を増幅する際に、ランダムに変異を導入しさらに超可変領域(CDR)1-2とCDR3部分をシャッフルしています。また重鎖(VH)遺伝子ライブラリーと軽鎖(VL)ライブラリーを別個に作製し、大腸菌内でVH-VLを組み合わせることにより、抗体遺伝子配列の種類は10の13-14乗に達します。ただし、実際にスクリーニングに使用するのは液量の制約から10の11-12乗のレパートリーになります。これでもヒトが一生で作り出す抗体のレパートリーに匹敵すると言われています。

当社ではこの物理的限界を超えるFab型抗体のスクリーニングシステムが完成間近です。

抗体レパートリーを最適化

当社の抗体ライブラリーの宿主菌は、7種のレアコドンtRNA遺伝子および複数のペリプラズムシャペロン遺伝子発現ベクターを保有しています。これによりヒト遺伝子由来抗体タンパクの産生量の偏りを減らし、抗体レパートリーを有効に利用出来るよう工夫しています。

​厳密な発現制御を可能にしました

一般的にタンパク発現ライブラリーは大腸菌にとって不要なタンパクを作り出すため不安定で、増幅させると遺伝子欠失クローンが増えてきます。この問題を克服するため、抗体タンパクを発現しない安定なVH・VLサブライブラリーから最終ライブラリーを調製します。また、漏洩発現が生じるLacプロモーターでなく、厳密な発現制御が可能なテトラサイクリン制御プロモーターを利用しているため、完成した一本鎖抗体ライブラリーも安定性が高いものとなっています。

抗体スクリーニング法

分子間相互作用測定装置 Octetによる
高親和性抗体クローン選別

基本的なスクリーニング法は、抗原と抗体ライブラリーを混合し、抗原に結合しない抗体提示ファージを洗浄・除去し抗原に結合したファージを回収します。この一連の操作をパンニングと呼びます。

抗原の固相化法・洗浄法に関する当社独自のノウハウを駆使し、高親和性抗体のスクリーニング効率を向上させています。また高親和性抗体を提示するファージはトリプシン消化により抗体部分を切断して確実に回収します。一般的な酸やアルカリ液では有用な高親和性抗体を提示するファージの回収率が低いので注意が必要です。回収したファージは大腸菌に再感染させ、ヘルパーファージの重感染によってファージタンパクを産生させ、新たな抗体提示ファージを調製し、次のパンニングに供します。

通常3回のパンニングの後、回収したファージを感染させた大腸菌をクローニングし、個々のクローンから抗体提示ファージを産生させ、抗原結合能を評価し選別します。
得られた抗体遺伝子を利用し、IgG型抗体やscFv-Fc融合抗体への改変も行っています。

当社ではシグナル強度が抗体の親和性と相関しないELSA法でなく、
分子間相互作用測定装置 Octetを使用し、高親和性抗体クローンを効率よく選別します。

クロス法、ガイド分子法など様々な方式に適用可能

試験管内でスクリーングする利点を生かし、似た抗原に結合するものを除去する「サブトラクション法」や、逆に同一エピトープ(抗原内の抗体結合部位)にも結合するものを選抜する「クロス選抜法」を取り入れることも可能です。また既存の抗体が結合する部位の近傍に結合するファージを単離する「ガイド分子法」も適応できます。

お問い合わせはメールフォームから随時受け付けております。
疑問点などございましたらお気軽にご相談ください。
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